第83章 娘を他人のベッドに送る

杉浦杏奈の唇が重なってきても、灰原仁司は動かなかった。

息が一瞬だけ沈み、それから彼の手が彼女の肩を滑り落ち、腰を掴んで自分のほうへ引き寄せる。

白いスーツの生地に杏奈の身体が押しつけられ、背中は岩肌に当たった。ひやりとした石の冷たさと、男の体温が交互に肌を刺す。

杏奈は目を閉じない。開いたまま彼を見つめ、掌の下で喉仏がごくりと動くのを確かめた。

灰原の呼吸はさっきより重い。身体も、わずかに変化している。

杏奈はくすりと笑い、手を下へ伸ばす。スラックス越しに、軽くもなく重くもなく押し当てた。

灰原の身体がぴくりと強張る。彼は彼女の手首を掴んだ。

「杉浦杏奈」

「外で待ってる人...

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